
※連絡事項、今回が寓話の最終話です。長いことダークサイドすみませんでした🙇
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村長と呼ばれるようになってから、
しばらくのあいだ、村は静かであった。
不満はあった。
文句もあった。
それでも、
決まらぬまま崩れていくよりは、
ましであった。
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村の周辺では、
ながく日照りが続いていた。
ある日、
隣村から人が来た。
顔色は悪く、
声は荒れていた。
「蝗が出た」
「畑がやられた」
「このままでは、冬を越せぬ」
噂は、ほどなく広がった。
蝗は、境を知らぬ。
どの村のものでもなく、
どの言い分にも従わぬ。
村人たちは言った。
「うちには来ぬだろう」
「風向きが違う」
「考えすぎだ」
だが同時に、
別の声もあがった。
「もし来たらどうする」
「今のうちに備えるべきだ」
「隣村を助ける余裕はあるのか」
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意見は分かれた。
分けるべきだと言う者。
守るべきだと言う者。
どちらも、
それぞれに正しいと思っていた。
視線は、
やがて一人に集まった。
村長であった。
「決めてほしい」
「どうするのがよい」
「間違えぬようにしてくれ」
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村長は、黙っていた。
蝗に、言葉は通じぬ。
隣村の怒りも、無視はできぬ。
助ければ、備えが減る。
助けねば、争いが起きるやもしれぬ。
隣の家の幼馴染は言った。
「決めれば、恨まれる」
「どちらにしても、文句は出る」
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長い間、雨は降らなかった。
日照りは、続いていた。
川は細り、
井戸の底が見え始めていた。
水は、
誰の味方でもなかった。
その夜、村長は眠れなかった。
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翌朝、
村長は人々を集めた。
「すべては守れぬ」
そう言ってから、話し始めた。
隣村には、期限を決めて水と穀物を分ける。
同時に、畑には防ぎを施す。
川の水は、使い道を限る。
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声があがった。
「それでは足りぬ」
「恨まれる」
「損をする」
村長は、言い返さなかった。
ただ、こう言った。
「よりよい案があれば、聞く」
「だが、決めぬままでは、
蝗も水も待たぬ」
沈黙が落ちた。
完全な案は、出なかった。
ゆえに、
その案が行われた。
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数日後、
蝗はこの村にも現れた。
畑は荒らされ、
怒声があがった。
隣村からは、
感謝と不満とが、
混じり合った言葉が届いた。
誰も、村長を褒めなかった。
それでも、
争いは起きなかった。
村は、壊れなかった。
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夜。
村長はひとり、
干上がりかけた川を見ていた。
かつては、
信じていれば軽かった。
疑わねば、考えずに済んだ。
だが今は違う。
自然も、
外の村も、
人の正しさも、
何ひとつ保証しない。
それでも、
決めねばならぬときがある。
村長は、
それを誇りとは思わなかった。
ただ、
引き受けたのだと思った。
それだけで、
すでに重かった。

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