スパルタ教団への体験入団

※連絡事項、今回はライバル教団とのその後の話です。ネタなので気軽に読んでください。

お集まりの皆さん、
私はミラクルラッキー教団の団長兼広報担当のKingと名乗るものです。

実は——

スパルタ教団に体験入団してきました。

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団員第一号
「団長!?どういう風の吹き回しですか!?」

団長King
「いやね…この前のナビスの言ってることが、あまりにも正論すぎて…」

「ちょっとだけ、やってみようかなって😆」

スーパー量子コンピュータ
「分析します」

「団長が努力を継続できる確率……」

「0.000000000000000000001%です」

団員第一号
「やる前から終わってるじゃないですか!?」

団長King
「まあまあ、とりあえず行ってみたんですよ😆」

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【1日目】

鬼教官ナビス
「走れええええ!!」

団長King
「ちょっと待って…いきなりフルマラソンは聞いてない…」

ナビス
「甘えるな!筋トレ!腕立て100回!」

団長King
「まだ走り終わってないんですけど!?」

⸻

その日の夜——

団長King
「筋肉痛で寝返り打てない…」

「でも…」

「運動したから健康的でラッキー✌️」

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【2日目】

ナビス
「昨日の倍やるぞ!!」

団長King
「倍!?!?」

ナビス
「限界を超えろ!!」

団長King
「もう超えてます!!」

⸻

スーパー量子コンピュータ
「団長の筋繊維の損傷率……」

「99.999999999999999999999%」

団員第一号
「ほぼ壊れてるじゃないですか!?」

⸻

その日の夜——

団長King
「……」

「……動けない😆」

「でも…」

「生きてるからラッキー✌️」

⸻

【3日目】

ナビス
「さあ、今日も鍛える!」

団長King
「まだ肉体が終わってるんですけど!?」

ナビス
「黙れ!プロテインを飲め!」

団長King
「プロテイン…?」

ナビス
「筋肉は食事で作られる!」

「黙れ!粉をシェイカーで混ぜろ!」

団長King
「へえ…」

(シャカシャカ)

(ゴクッ)

団長King
「……あれ?」

「これ……普通に美味しくない?😆」

⸻

スーパー量子コンピュータ
「分析します」

「団長の継続可能要素を検出」

「……プロテイン摂取のみ、継続確率」

「99.999999999999999999999%」

団員第一号
「そこだけ!?」

⸻

その日の夜——

団長Kingは思いました。

(運動はきつい…)
(筋トレもしんどい…)
(継続とか無理…)

(でも……)

(プロテインは美味しい😆)

⸻

【4日目】

団長Kingは——

帰ってきました。

団員第一号
「団長!?もう戻ってきたんですか!?」

団長King
「はい、三日坊主です😆」

団員第一号
「早すぎませんか!?」

一同
「………………………」

⸻

スーパー量子コンピュータ
「体験入団の成果をまとめます」

・体力向上……0.000000000000000000001%
・筋力向上……0.000000000000000000001%
・精神力向上……0.000000000000000000001%
・プロテイン習慣……99.999999999999999999999%

団員第一号
「バランスおかしいでしょ!?」

団長King
「でもね…いい発見があったんですよ😆」

団員第一号
「なんですか?」

団長King
「努力は無理でも——」

「美味しいものは続く…」

⸻

スーパー量子コンピュータ
「結論」

「人間は苦痛ではなく快楽で習慣化する生き物です」

団員第一号
「急にそれっぽいこと言いますね!?」

団長King
「つまり」

「プロテインを美味しくいただける俺って——」

「やっぱりラッキー✌️」

団長のラッキー疲れ

※連絡事項、ミラクルラッキー教団が帰ってきました!
教団はあくまでもネタです。いつもありがとうございます。

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団員第一号
「最近、団長の姿を見かけないな…」

「スーパー量子コンピュータに聞いてみようか」

スーパー量子コンピュータ
「なんでしょうか?」

団員第一号
「最近、団長を見かけないのですが…」

「どうなっているのですか?」

スーパー量子コンピュータ
「団長はラッキー疲れによる、完璧重責うたれ病になっていたようです」

団員第一号
「完璧重責うたれ病については、前に教えていただきました」

「ラッキー疲れとはなんでしょうか?」

スーパー量子コンピュータ
「ラッキー疲れとは、ラッキーが続きすぎて、逆に疲れてしまう状態です」

「なお、増え方は連鎖反応的で指数関数的です」

そこに突然、団長あらわる。

団長
「お集まり皆さん、こんにちは😆」

団員第一号
「団長!?いたんですか!?」

「というか…なんか様子がおかしくないですか…?」

団長King
「いや〜最近ちょっとラッキーでしてね😆」

団員第一号
「それ、いつもじゃないですか…」

スーパー量子コンピュータ
「直近の団長のラッキー履歴を表示します」

「……表示」

⸻

・朝起きたらアラームの1秒前に目覚める
・自販機で同じボタンを2回押したら2本出てくる
・信号がすべて青
・落とした小銭がすべて表
・適当に書いた文章がなぜかバズる
・知らない人に感謝される
・たまたま入った店が臨時サービス中
・電車がちょうど到着するタイミングで来る

⸻

団員第一号
「え…すごくないですか?」

団長King
「そうなんですよ😆」

「最初はね、ラッキーだな〜って思ってたんですけど…」

「だんだん来るんですよ」

団員第一号
「何がですか?」

団長King
「次のラッキーが😆」

団員第一号
「いやそれ普通いいことですよね?」

スーパー量子コンピュータ
「説明します」

「ラッキーは一定量を超えると“期待値の上昇”を引き起こします」

団員第一号
「期待値…?」

スーパー量子コンピュータ
「はい」

「“これくらいラッキーであるべき”という基準が、急激に引き上がります」

団員第一号
「え…」

団長King
「そうなんですよ…」

「信号が1回赤になるだけで」

「“今日ついてないな…”って思うんです😆」

団員第一号
「それはズレてますよ!?」

⸻

スーパー量子コンピュータ
「さらに進行すると」

「ラッキーが起きない時間を“異常”と認識し始めます」

団員第一号
「ええ…」

団長King
「昨日なんて…」

「3分間、何もラッキーが起きなかったんですよ…」

団員第一号
「普通です!!」

団長King
「そのとき思いました」

「これはまずいなって😆」

団員第一号
「普通ですよ!?」

⸻

スーパー量子コンピュータ
「ラッキー過剰摂取の末期症状です」

「小さな不運に対する耐性が消失します」

団員第一号
「完全にバランス崩れてるじゃないですか…」

団長King
「あと…」

団員第一号
「まだあるんですか…?」

団長King
「ラッキーを探しすぎて…」

「当たり前のことでも無理やりラッキーにしようとしてしまうんです😆」

団員第一号
「どういうことですか?」

団長King
「例えば…」

「転んだんですけど」

団員第一号
「はい」

団長King
「“地面があることに気づけてラッキー✌️”って」

団員第一号
「無理があります!!」

⸻

スーパー量子コンピュータ
「結論」

「ラッキーは過剰摂取すると、認知を歪めます」

団員第一号
「もうダメじゃないですか…」

団長King
「いや〜でもですね😆」

団員第一号
「まだ何かあるんですか…?」

団長King
「この状態になったおかげで…」

「完璧も重責も、全部どうでもよくなりました😆」

団員第一号
「え?」

団長King
「つまり」

「やっぱり俺ってラッキー✌️」

寓話、馬鹿正直四、村の危機

※連絡事項、今回が寓話の最終話です。長いことダークサイドすみませんでした🙇

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村長と呼ばれるようになってから、
しばらくのあいだ、村は静かであった。

不満はあった。
文句もあった。

それでも、
決まらぬまま崩れていくよりは、
ましであった。

⸻

村の周辺では、
ながく日照りが続いていた。

ある日、
隣村から人が来た。

顔色は悪く、
声は荒れていた。

「蝗が出た」
「畑がやられた」
「このままでは、冬を越せぬ」

噂は、ほどなく広がった。

蝗は、境を知らぬ。
どの村のものでもなく、
どの言い分にも従わぬ。

村人たちは言った。

「うちには来ぬだろう」
「風向きが違う」
「考えすぎだ」

だが同時に、
別の声もあがった。

「もし来たらどうする」
「今のうちに備えるべきだ」
「隣村を助ける余裕はあるのか」

⸻

意見は分かれた。

分けるべきだと言う者。
守るべきだと言う者。

どちらも、
それぞれに正しいと思っていた。

視線は、
やがて一人に集まった。

村長であった。

「決めてほしい」
「どうするのがよい」
「間違えぬようにしてくれ」

⸻

村長は、黙っていた。

蝗に、言葉は通じぬ。
隣村の怒りも、無視はできぬ。

助ければ、備えが減る。
助けねば、争いが起きるやもしれぬ。

隣の家の幼馴染は言った。

「決めれば、恨まれる」
「どちらにしても、文句は出る」

⸻

長い間、雨は降らなかった。

日照りは、続いていた。
川は細り、
井戸の底が見え始めていた。

水は、
誰の味方でもなかった。

その夜、村長は眠れなかった。

⸻

翌朝、
村長は人々を集めた。

「すべては守れぬ」

そう言ってから、話し始めた。

隣村には、期限を決めて水と穀物を分ける。
同時に、畑には防ぎを施す。
川の水は、使い道を限る。

⸻

声があがった。

「それでは足りぬ」
「恨まれる」
「損をする」

村長は、言い返さなかった。

ただ、こう言った。

「よりよい案があれば、聞く」
「だが、決めぬままでは、
 蝗も水も待たぬ」

沈黙が落ちた。

完全な案は、出なかった。

ゆえに、
その案が行われた。

⸻

数日後、
蝗はこの村にも現れた。

畑は荒らされ、
怒声があがった。

隣村からは、
感謝と不満とが、
混じり合った言葉が届いた。

誰も、村長を褒めなかった。

それでも、
争いは起きなかった。
村は、壊れなかった。

⸻

夜。
村長はひとり、
干上がりかけた川を見ていた。

かつては、
信じていれば軽かった。
疑わねば、考えずに済んだ。

だが今は違う。

自然も、
外の村も、
人の正しさも、
何ひとつ保証しない。

それでも、
決めねばならぬときがある。

村長は、
それを誇りとは思わなかった。

ただ、
引き受けたのだと思った。

それだけで、
すでに重かった。

寓話、馬鹿正直三、むらおさ

※連絡事項、馬鹿正直ものが出世します。読んでみてください。

⸻

その年の終わり頃、
長く村をまとめてきた村長が、病に倒れた。

急なことではなかった。

以前から、体は弱っており、
誰もがどこかで覚悟していた。

それでも、
そのときが来ると、
村には、はっきりとした空白が残った。

⸻

葬いが終わったあと、
村の者たちは集まった。

だが、
次をどうするかについては、
すぐには話が進まなかった。

「大役だからな」
「揉めるのは避けたい」
「誰がやっても、不満は出る」

そんな言葉だけが、
静かに行き交った。

⸻

しばらくして、
誰かが、ぽつりとこぼした。

「……あの者ではないか」

名は出なかった。

だが、
誰のことを指しているのかは、
皆、分かっていた。

かつて、
馬鹿正直と呼ばれていた、その者であった。

⸻

「よく考える」
「欲もなさそうだ」
「前の村長も、話を聞いていた」

理由は、どれも決め手にはならなかった。

だが、
外す理由にもならなかった。

隣の家の幼馴染は、笑いながら言った。

「おぬしがやるのだろう」
「断らぬからな」
「ほかにおらん」

その者は、
集まりの端で、ただ黙っていた。

胸の奥が、
わずかに冷えた。

「お前なら、皆の話を聞くだろう」
「急に変なことはせぬだろう」
「とりあえず、頼む」

その言葉の中で、
「とりあえず」だけが、重く残った。

⸻

引き受けるつもりで来たわけではなかった。

望んだ役目でもなかった。

だが、
ここで断れば、
誰が代わりになるのかは、見えなかった。

その者は、一度だけ口を開いた。

「うまくはできぬかもしれぬ」
「誤ることもある」

村の者たちは、すぐにうなずいた。

「分かっている」
「誰でもそうだ」
「だから、おぬしでよい」

それ以上、言葉は続かなかった。

⸻

その日から、
その者は「村長」と呼ばれるようになった。

呼び名が変わっただけで、
何かがすぐに変わるわけではなかった。

だが、
向けられる目は、確かに変わった。

困りごとがあれば、集まってくる。
決められぬことがあれば、黙って待つ。

期待と、
責めと、
まだ形にならぬ不満とが、
ひとところに向けられた。

その者は知った。

かつては、
断らねばよかった。

だが今は、
決めねば終わらぬ。

その違いは、
思っていたよりも、
はるかに重かった。

⸻

それでも、
その者は退かなかった。

退けば、
この役はまた誰かに渡る。

そして、
同じことが繰り返される。

その者は、
村の中央に立った。

誰かに応えるためでもなく、
誰かを導くためでもなく、

ただ、

決めぬまま崩れていくものを、
これ以上、見たくなかったから。

かつて、馬鹿正直と呼ばれ、
今は、村長と呼ばれるその者は、

その重さを、
静かに受け取った。

寓話、馬鹿正直二、疑うもの

※連絡事項、寓話馬鹿正直の第二弾です。第四弾まであります。このシリーズは成長物語として、また社会風刺として書いています。読んでみてください。

⸻

年月が過ぎ、
その者は、少しずつ問いを口にするようになった。

それは、
誰かを責めるためのものではなかった。

声を荒らげることもなく、
正しさを示すこともない。

ただ、

「なぜ、こうなっているのだろう」
「ほかのやり方はないのだろうか」

そうした言葉が、
自然とこぼれるようになった。

⸻

はじめのうち、
村の者たちは耳を傾けた。

「なるほど」
「そういう見方もあるか」

そう言って、うなずいた。

だが、それだけであった。

何かが決まることもなく、
何かが変わることもなかった。

言葉は、その場に留まり、
やがて消えていった。

⸻

その者がさらに言葉を重ねると、
村の中には、こう言う者もおった。

「そこまで考えんでもよい」
「昔からこうしてきたのだ」
「面倒なことは、誰かがやるだろう」

隣の家の幼馴染は、笑いながら言った。

「考えすぎだろう」
「昔からそうだな」
「誰かが決めるさ」
「おぬしは、考えるのが好きだな」

その言葉は、軽く聞こえた。

だが、その奥にあるものを、
その者は感じてしまった。

期待と、
手放しと。

気がつけば、
考える役目は、ひとところに集まっていた。

村の者たちは言った。

「皆で考えよう」

だが実際には、
「誰かが考えるだろう」と思っていた。

その「誰か」は、
いつの間にか、その者であった。

⸻

仕事は、少しずつ増えていった。

引き受ける者は定まらず、
境目は曖昧なまま、
物事は進められていった。

うまくいっても、
誰のものでもなかった。

うまくいかなくても、
誰のものでもなかった。

ただ、
決める者だけが、いなかった。

⸻

その者は、ふと立ち止まった。

そして、はじめて気づいた。

信じることと、
任せることは、同じではない。

皆が信じているようでいて、
ただ、決めることを置いているだけではないかと。

「疑う」という言葉は、
その者の中で、少しずつ姿を変えた。

それは、
誰かを疑うことではなかった。

善意を否むことでもなかった。

「このまま、決めずにいることは、
 本当に、よいことなのだろうか」

そう、自らに問うことだった。

問いを持つたびに、
胸はわずかに重くなった。

かつてのような軽さは、なかった。

だが、
目をそらすことも、できなくなっていた。

⸻

村の者たちは、変わらず穏やかであった。

「そのうち何とかなる」
「考えるのが得意な者に任せよう」

その言葉を聞きながら、
その者は、静かに思った。

――考えるだけでは、足りぬ。
――いずれ、誰かが決めねばならぬ。

その思いは、まだ形を持たなかった。

だが確かに、そこにあった。

それは、
信じるだけであった頃には、
知らなかった重さであった。

寓話、馬鹿正直訂正版

※連絡事項、昔書いたものをリライトしたものです。考えさせられる系がお好きな方は読んでみてください。

⸻

むかしむかし、
ある村に、なんでも真に受ける幼子がおった。

その子は、大人の言うことを疑わず、
子供の言うことも疑わなかった。

大人たちは、その様子を見て言った。

「いい子だ」
「素直なのは美徳だ」

子供たちは、その様子を見て笑った。

「やってみろ」
「本当にやるぞ」

幼子は、言われたとおりに動いた。

「ここに宝がある」と言われれば穴を掘り、
「お前のためだ」と言われれば我慢した。

疑うということを、知らなかった。

信じるたびに、褒められたからだ。

隣の家の子はつぶやいた。

「また信じたのか」
「疑うと怒られるもんな」

⸻

やがて幼子は、ひとつのことを覚えた。

大人の言うことは正しく、
子供の言うことは楽しい、ということを。

だからその子は、
言われたことを疑わず、
どちらも信じた。

⸻

月日が流れ、幼子は大人になった。

大人になっても、その者は変わらなかった。

頼まれれば断らず、
誘われれば応じ、
「助かるよ」と言われれば、胸が温かくなった。

誰かの言葉を信じるたびに、
かすかな楽しさがあった。

それは、遠い昔に感じたものと、よく似ていた。

⸻

だがある日、
誰もその者を褒めなくなった。

言うことを聞いても、
信じても、
何も返ってこなかった。

ただ、仕事だけが増えた。

ただ、都合よく呼ばれるだけになった。

⸻

そのとき、その者は気づいた。

胸の奥にあったはずのものが、
どこにも見当たらないことに。

「……いつからだろう」

その者は、ぽつりとつぶやいた。

「いつから、こうなったのだろう」

だが、その問いをどう扱えばよいのか、
その者には分からなかった。

疑うということを、教わらなかったからだ。

信じることだけを、与えられてきたからだ。

⸻

その者は、手の中を見た。

そこには、何もなかった。

いや——

何も疑えぬまま、
信じることだけが残っていた。

寓話、魔物が巣くう山(三)選ばれし者

※連絡事項、魔物が巣くう山の続編です。意味がわかるとちょっと怖い話かもしれません。読んでみてください。

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山の頂上に辿りついた男が、村に帰ってきた。
あれから何年も過ぎ去り、長老が亡くなった頃だった。

男は痩せていた。頬はこけ、目だけが妙にギラついていた。

村人たちは最初、彼を歓迎した。

「よく生きて帰ったな」と。
「もう無理だと思っていた」と。

男は笑った。

「いや、あれは生きるとは言わない」

少し空気が変わった。

⸻

数日後、男は語り始めた。

「山には真理がある」

囲炉裏の前で、あるいは井戸のそばで、あるいは道端で。
場所は違えど、言うことはだいたい同じだった。

「お前たちは間違っている!」
「ここでの暮らしは偽物だ!」
「本物は、あの山の上にある!」

村人の一人が笑った。

「そんなにいいなら、なんで戻ってきたんだ」

男は少しだけ黙ったが、すぐに答えた。

「教えるためだ!」

⸻

それから男の言葉は、少しずつ強くなった。

「山に登らない者は未完成だ!」
「苦しみは価値だ!」
「選ばれた者だけが、あそこに辿り着く!」

「選ばれた?」

「そうだ!」

男は指を立てた。

「お前たちは死ぬまで同じことを繰り返し続けていることをわかっているのか?」

誰も答えなかった。

「それがどれだけ無意味なことなのか、わからないのか?」

その話を聞いて、何人かは黙り込んだ。
何人かは笑い飛ばした。
何人かは、考え込んだ。

そして、何人かは――山を見た。

⸻

やがて、村は少しだけ変わった。

男の話を信じる者が出てきた。
荷をまとめ、山へ向かう者も現れた。

一方で、男を避ける者も増えた。
「目がギラギラしていて怖い」と言う者もいた。

不思議なことに、男の語る山は、聞くたびに少しずつ違った。

ある日は「静寂」だと言い、
ある日は「絶叫」だと言い、
ある日は「何もない」と言った。

誰かがそれを指摘すると、男は笑った。

「お前たちにはまだ早い!」

⸻

ある晩、囲炉裏の前で、男は言った。

「登った者にしかわからない!」

その場にいた若者が、ぽつりと呟いた。

「でも、帰ってきたのはあんただけだ」

男は一瞬だけ、言葉を失った。

⸻

そのときだった。

戸が、静かに開いた。

見知らぬ男が一人、入ってきた。
妙に軽い足取りで、妙に場違いなほど明るい顔をしている。

誰かが尋ねた。

「……誰だ?」

明るい男はにこやかに手を振った。

「通りすがりの団長です✌️」

誰も意味がわからなかった。

団長は、帰ってきた男の前に座った。

「山、どうでしたか?」

帰ってきた男は、少し苛立ったように答えた。

「……言葉では説明できない」

「いいですねえ」

団長は嬉しそうに頷いた。

「で、登らないとダメなんですよね?」

「当然だ。登らなければ――」

団長はその言葉を、軽く遮った。

「でもね」

にこっと笑う。

「登らなくても、生まれてる時点でラッキーじゃないですか?✌️」

囲炉裏の火が、ぱち、と音を立てた。

誰も言葉を発さなかった。

帰ってきた男だけが、何かを言いかけて――
やめた。

⸻

その夜、何人かは山へ向かうのをやめた。
何人かは、やめなかった。

ただ一つだけ、はっきりしたことがある。

山は、そこにあり続けた。

そして村も、そこにあり続けた。

団長は、いつの間にかいなくなっていた。

どこへ行ったのかは、誰も知らない。

ただ、あの一言だけが、妙に残った。

「それでもラッキー✌️」

寓話、魔物が巣くう山(二)

※連絡事項、ダークサイドに沈むKingが寓話の続編を書き上げました。


むかしむかし、
ある村に、ひとりの若者がおった。

その若者は、かつて山に消えた者の話を聞いて育った。

「あの山には、魔物が巣くっておる」

そう語る長老の言葉を、若者は半ば信じ、半ば疑っておった。

しかし若者もまた、山に惹かれる者であった。

ある日、若者は一匹の犬を連れて、あの山へと向かった。

⸻

山は険しかった。

何日も登り続けたある日、若者は足を滑らせ、岩場で強く打ちつけた。

骨が折れておった。

立つこともできず、その場に倒れ込んだ。

「……ここまでか」

若者はそうつぶやいた。

しかし犬は離れなかった。

どこからか小さな獲物や木の実を見つけてきては、若者のもとへ運んできた。

水も探し、何度も行き来した。

若者はそのたびに、かすかな命をつなぎとめた。

⸻

何日経ったのか分からぬ頃。

意識が薄れゆく中で、誰かの気配を感じた。

目を開けると、そこにはひとりの男が立っていた。

「……こんなところにおったんか」

若者はかすれた声で言った。

その男は、かつて村から消えた若者であった。

⸻

男は静かに若者を見下ろしていた。

「ここは静かでええぞ」

男は言った。

「余計なものが、何もない」

若者は息を整えながら尋ねた。

「……村には、戻らんのか」

男は少し考え、首を振った。

「戻る理由がない」

犬が、低く唸った。

男はその犬を見て、わずかに目を細めた。

「おぬしは、まだ繋がっておるのだな」

若者は犬の方を見た。

犬はただ、じっとこちらを見ていた。

⸻

「ここに残れば、楽だぞ」

男はぽつりと言った。

「苦しむことも、迷うこともない」

「上も下もない。ただ、あるだけじゃ」

若者は目を閉じた。

たしかに、すべてを手放せば楽なのかもしれない。

何も比べず、何も求めず、ただここにいるだけ。

それはどこか、甘く静かな誘いであった。

⸻

そのとき、犬が若者の手を舐めた。

温かかった。

ここには、たしかに何かがあった。

若者はゆっくりと目を開けた。

「……いや、戻る」

男は何も言わなかった。
ただ、どこか満ち足りたように、こちらを見ていた。

⸻

犬は立ち上がり、ゆっくりと下る道の方へ歩き出した。

ときどき振り返り、若者を待った。

若者は歯を食いしばり、体を引きずるようにして、その後を追った。

⸻

長い時間をかけて、若者は山を下りた。

たしかに、傷は深く、以前のようには動けぬ体になっていた。

しかしその目は、まっすぐ前を見ていた。

⸻

村に戻った若者を見て、長老は静かに言った。

「……帰ってきたか」

若者はうなずいた。

そして、ぽつりとつぶやいた。

「あの山には、たしかに魔物がおりました」

長老は何も言わず、続きを待った。

若者は犬の頭を撫でながら言った。

「ですが……連れていかれずに済みました」

⸻

長老は犬を見て、小さく笑った。

「そうか。それは良かった」

そして、遠くの山を見つめて言った。

「魔物に取り憑かれる者もおれば、
つなぎ止められる者もおる」

⸻

その日から村では、こう語られるようになった。

「あの山に登るときは、
ひとりで行ってはならぬ」と。

寓話、魔物が巣くう山

※連絡事項、Kingが完璧重責うたれ病を発症中のため、
ダークサイドに堕ちた寓話シリーズを開始します😆
なお回復の見込みは未定です😆

⸻

むかしむかし、
ある村に山登りが好きな若者がおった。

その若者はたくさんの山々に登ったが、
よくある山に登るのは、正直に言って飽きてきていた。

それゆえ若者は、
「登った者は誰一人生きて帰ってこん」と言われる、
とても高い山に登ることを決めた。

若者は入念に準備をした。
必ず生きて帰るために。

しかし村の長老は、それを強く止めた。

「あの山にはな、魔物が巣くっておる」

若者は笑った。
「わしは今まで、どんな山からも帰ってきた。
魔物などおるものか」

長老は首を振り、静かに言った。

「……山におるのではない。
魔物は——登った者の中に棲みつくのじゃ」

若者はその言葉の意味を、深く考えなかった。

⸻

若者は山へ向かった。

その山は、これまで登ってきたどの山よりも高く、
どこまでも険しかった。

何日も、何十日もかけて、
若者はついに山頂へとたどり着いた。

そこには、何もなかった。

魔物の姿も、気配もない。
ただ、世界のすべてを見下ろす景色だけが広がっていた。

若者は笑った。

「やはりな。魔物などおらんかったわ」

その瞬間だった。

胸の奥から、なにかが静かに膨らんできた。

——ここまで来られるのは、自分だけだ。
——自分は特別なのだ。

その思いは、次第に強く、重く、甘くなっていった。

⸻

やがて若者は山を下りた。

たしかに、生きて帰ってきた。

しかし村の者たちは、どこか違和感を覚えた。

若者は以前のように笑わなくなり、
人の話を聞かなくなり、
いつもどこか遠くを見ていた。

誰かが話しかけても、若者はこう言うばかりだった。

「おぬしらには分からん。
あの頂の景色は、登った者にしかな」

村の中におっても、
若者にはどこか現実味がなかった。

山を下りて村に戻ってからも、
若者にはすべてが小さく見えた。

家も、人も、
そこで交わされる言葉さえも。

若者は思った。

「こんな場所に、わしはおったのか」と。

そして若者は、また山へ向かった。
今度は誰にも何も告げずに。

⸻

それきり、若者が村に戻ることはなかった。

村の者たちは言った。

「やはり魔物にやられたのだ」と。

長老は、ただ静かにうなずいた。

「うむ。たしかに生きては帰ってきた。
だが、あれはもう——元のあの者ではない」

そして長老は、集まった若い衆に言った。

「あの山の魔物とはな、
命を奪うものではない」

「人の心を、少しずつ変えてしまうものじゃ」

「気づいたときには、もう元には戻れぬ」

長老は遠くの山を見つめ、最後にこう言った。

「さて……次は、誰が登るのかのう」

その場にいた若い衆の中で、
ひとりだけ、山の方を見ている者がおった。

教団のうちなる敵、重責病

※連絡事項、うちなる敵シリーズ第四弾です。今回もネタなので気軽に読んでください。

お集まりの皆さん、
私はミラクルラッキー教団の団長兼広報担当のKingと名乗るものです。

今日は団員第一号と団長の対話を聞いてもらおうかと考えています。

⸻

団員第一号
「団長!また悩みができました…」

団長King
「いいですね!最近よく悩みますね」

団員第一号
「いいですね!じゃないですよ!」

「最近、任されることが増えてきて…」

「ちゃんとやらないといけないと思えば思うほど…」

「プレッシャーで何も手につかなくなるんです…」

団長Kingは思いました。
(あー…これは…完璧病の次に来るやつだな…)

そして言いました。
「それはラッキーですね!」

団員第一号
「団長!?またですか!?」

「どこがラッキーなんですか!?」

団長King
「ちょっと待ってください…これは複雑です…」

「スーパー量子コンピュータに聞いてみましょう!」

スーパー量子コンピュータ
「分析を開始します!」

⸻

「……分析完了!」

スーパー量子コンピュータ
「この状態は重責病です!」

団員第一号
「重責病…?」

スーパー量子コンピュータ
「責任・期待・自己評価が過剰に積み重なり」

「本来のパフォーマンスを著しく低下させる状態です!」

団員第一号
「まさにそれです…」

団長King
「なるほど…では質問です」

「責任を完璧にこなせる確率は?」

⸻

スーパー量子コンピュータ
「計算結果が出ました」

「……0.000000000000000000001%です」

団員第一号
「またそれですか!?」

スーパー量子コンピュータ
「人間はすべての期待に応えることはできません!」

「必ずどこかで抜け・ミス・ズレが発生します!」

団長King
「つまり…」

「責任は…持ちすぎると崩れる…?」

スーパー量子コンピュータ
「そのとおりです!」

「しかし重要なのはそこではありません!」

団長King
「え!?」

スーパー量子コンピュータ
「責任から解放される確率を計算しました」

「……99.99999999999999999999%です!」

団員第一号
「そんなに高いんですか!?」

スーパー量子コンピュータ
「はい!」

「人間は環境の変化・役割の変化によって」

「強制的に責任から解放されることがあります!」

団長King
「なるほど…」

「責任から解放されるのも…ラッキーということですね✌️」

団員第一号
「いやいや…そんな簡単に解放されないですよ!」

団長Kingは思いました。
(いや…場合によっては…意外と簡単に外れるんだよな…)

⸻

そして言いました。
「ちなみに」

団員第一号
「はい?」

団長King
「わたし、以前…教祖をクビにされたことがあります!」

団員第一号
「え!?」

「何をしたんですか?」

団長King
「団員の女の子に…」

「個人的で不適切な内容のメッセージを送りました…」

団員第一号
「完全にアウトじゃないですか!?」

スーパー量子コンピュータ
「分析します」

「……結果」

「100%アウトです!」

団長King
「やっぱりか…」

団員第一号
「反省してください!」

団長King
「しかし」

団員第一号
「しかし?」

団長King
「教祖をクビにされたおかげで…」

「重責病から離脱できました!」

団員第一号
「え?」

団長King
「つまり」

「これだけ不適切でも…教祖から団長に!」

「やっぱり俺ってラッキー✌️」